【現地本部長日記】「これまでとこれから」
掲載日:2011.08.16
お盆で一つの区切りということで、これまでの進捗状況と今後の計画をご報告します。
東京電力福島第一原発については、明日で早くもステップ2の最初のひと月が終了です。詳細は明日の日記に書きます。
20キロ圏内被災者の一時立入りはお盆前にほぼ全ての一巡目のオペレーションを完了しました。お盆明けからは、自動車を持ち出すオペレーション、3キロ圏内への初回の一時立入り、そして9月からは二巡目の一時立入りを行います。二巡目を始めるに際しては、一巡目の反省点・地元自治体からの要望を受け止め、可能な限り被災者のご希望に沿えるオペレーションに改善を図ります。たとえば、自家用車での立ち入りも認めていく方向です。
企業については一般の一時立入りとは別に「公益立入」という形で適宜認めて来ましたが、今般3キロ圏内への立入が可能となったことから、今後、20キロ圏内の全ての希望する企業が原則として一時立入りを認められることになります。なお、3から5キロ圏には従来は放射線管理員を同行させていましたが、今後は3キロ以内の場合にのみ同行させることにします。
特定避難勧奨地点、いわゆるホットスポットですが、伊達市、南相馬市の後、いわき市に関しては結局該当地点は無く、川内村には一箇所指定されました。現在は福島市の渡利・大波・小倉寺地区の詳細測定を行い、今後指定地点の自治体との協議・調整を行うところです。新規のホットスポットの指定は、ピークを過ぎたものと考えています。
緊急時避難準備区域に関しては、解除に向けた当該5自治体(南相馬市、田村市、川内村、広野町、楢葉町)の復旧計画の策定が進められているところです。策定完了の後、区域解除は5自治体を一斉に行いますが、その後の住民帰還の開始は、各自治体の復旧計画や除染の進捗状況を確認しながら、自治体ごとに決定されることになります。
ホールボディーカウンターによる内部被ばく測定に関してですが、放医研とJAEAのご協力により浪江町、川俣町、飯館村の2500名ほどが検査を完了しました。このうちの120名が放医研による測定で、これは県民健康調査の一環として計画されていたものですが、それでは県民の不安に十分なスピードで対処できないと判断し、私が着任早々にJAEAに対して協力をお願いしました。もちろんどちらで測定しても被験者に不公平は生じません。今後、上記3町村の方々の測定の拡大、測定対象市町村の拡大(最終的には県内の全市町村)、さらには県外避難者への測定の実施、追加の測定機器の調達などの課題を詰めてまいります。
除染については、福島市が東北大学の石井先生、伊達市は県ア
ドバイザーにもなった前原子力委員会委員長代理の田中俊一先生、南相馬市は東京大学の児玉先生といったように、自治体ごと大学の先生などと組んで独自の実証実験を始めています。国や県からは身近な場所の除染に関するマニュアルが出されていますが、8月末を目処に本格的な除染の指針を出す予定です。今後、ヒト(訓練、研修も必要)・モノ・カネを結集して、産官学の英知を集め、縦割り行政を排し、福島県を中心に例えば除染センターというようなものを立ち上げ、徹底的な除染を実行する推進体制の確立が必要です。なお、この除染指針の公表に合わせて、学校でのこれまでの基準値(年間1~20ミリシーベルトを目安とし、今後できる限り減らしていくとの考え方)の見直しも行われる予定です。
モニターリングですが、これも8月末までに2キロメッシュで行った福島県全域の空間線量率(単位シーベルト)と土壌汚染(単位ベクレル)とが公表される予定です。さらに、食品経由の内部被ばくに関連して、食品安全委員会が去る7月26日に発表した「生涯に100ミリ」という案に対するパブコメが現在行われており、それを受けて8月末には3月17日発表の食品の暫定規制値の見直しが開始される予定です。
ペットの保護に関しては、福島県・環境省・福島県獣医師会が中心になり、それに私のところ(現地対策本部)も協力する形でこれまで取り組みが行われてきました。日々の一時立入りに伴う保護に加えて集中保護活動も実行し、現在約600頭が3箇所のシェルターと動物病院(獣医師会のご協力による)に保護されている状況にあります。一時立入りが全避難住民に対して一巡したため、今後は日中の暑い時間帯を避けながら県職員や保健所職員らによる法に基づいた保護活動が中心となります。
除染によって子どもたちの生活環境から放射能を排除することが最重要であることは言うまでもありませんが、同時に、福島の子どもたちに線量の低いところで
の生活と学びの場を用意することも検討すべきです。2学期以降の子どもたちの環境をどう整備するか、現在、福島県での検討が始まっており、8月末までに何らかの具体的な方向性が示される予定です。夏休み中には子どもたちが県外で過ごすケースも多いのですが、全体の生徒数からすればごく一部に過ぎず、また家庭の事情や経済力による格差もあります。現在検討が始まっている取り組みは、全ての希望する家庭を対象とした学校の学期中の対策です。
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