予算委員会質疑の振り返り
掲載日:2020.02.05
経済産業委員会の筆頭理事として、昨日のテレビ入りの予算委員会の質疑者として起用されました。桜を見る会やカジノ、あるいは喫緊の新型肺炎のテーマばかりではなく、骨太の経済政策を扱うと言う国対方針に沿うものでありましたが、不正の追求のようなテーマとは違い果たしてどこまでインパクトのある質疑になるか、私自身も試練でありました。幸いポジティブなご評価をたくさん頂戴し、まずは一定の責任を果たせたと安堵しておりますが、他方で議事録を読み返しますと反省点が多々見つかり、次回以降へ活かしていかなければと思っております。
まず、どういうテーマで口火を切るかが非常に大事でありますが、この点は、国対とも相談して、事前通告はしておりませんが昨年からの流れの中で当然の懸案として関西電力に関わる原発マネーの問題を取り上げました。大阪の関西電力本社では警備員の対応のみでしたし、また福井県まで敦賀原発の視察もいたしましたが、第三者委員会の報告までは何らの情報も関電側からは開示されないままに年が明け、また監督官庁である経済産業省も非常に及び腰な姿勢でありました。加えて菅原前経済産業大臣の辞任問題も重なり、私たちは問題の解明をこの国会の場に移したわけであります。政府が予定をしている電力エネルギー関連の法案審議が終わった後にしか第三者委員会報告書が出てこないと言う話を仄聞し、質疑の冒頭にそうしたことが起きないように釘を刺させていただきました。いずれにせよこの原発マネーの問題の広がりや根深さを明らかにし、徹底的な原因究明を行っていかねばなりません。
次に、喫緊の課題である新型肺炎に関しても、成田空港を擁する地元を意識しながら質問をいたしました。原発事故の後、安倍総理がUnder Controlと言ってオリンピックを勝ち取ったわけでありますから、そのオリンピックが近づいている今、原発とは異なる新たな試練である新型肺炎はUnder Controlと言えるのかどうか? そしてポイントは人柄が極めて信用されていない異例な総理大臣が、今後新型肺炎の不都合な真実に直面したときに果たして誠実に国民と対話ができるかどうか、モリカケから桜を見る会まで多くの国民の不信感を払拭させるためにも、その点に関して予防的に総理自身の発言を求めました。
次には、前の質疑者との連携を意識してカジノに絡めた質問を急遽入れることにしました。階猛委員が直前にカジノによって海外に2.5兆円の国富の流出の可能性を指摘しましたので、直感的にこれはわかりやすい対比になると考えました。事前の質疑通告で経済産業大臣から発電のための資源の輸入調達コストの数字を年間5.7兆円と確認しておりましたので、その歴然とした違いを取り上げました。この辺はエネルギー政策に関わっている議員の間では常識的な話ではありますが、普段の経済産業委員会とは異なる多くの国民の皆様がテレビを通じて見ていただく予算委員会には、独特の訴求力が求められます。ただし、安倍総理が指摘していたように、カジノの数字は政府が認めた数字ではなかったため、今後さらに調査をしてより説得力のある定量的な対比を検討して参ります。
以上が冒頭の3つの項目でありましたが、その後の質疑のためにパネルは4枚用意いたしました。これもテレビの向こうにいらっしゃる国民を強く意識して、ビジュアル的にわかりやすい事を最重視しました。最初のパネルは、安倍政権のエネルギー政策の本質を私の言葉で記述したパネルで、なるべくそれを長時間国民にお見せしておくように隣の席の宮川代議士と打ち合わせをしました。最初は「安倍内閣のエネルギー政策=」とタイトルをしておりましたが、当日になって与党からそのままではパネルとして認められないと言われ、急遽「安倍内閣のエネルギー政策への批判」と修正いたしました。
なお、もう一点、当日急遽変更になったのは、答弁者であります。当然のことでありますが、喫緊の課題である新型肺炎に関して対応に追われる厚生省には野党も全面的に協力をすると言う立場から、厚生労働大臣の答弁を副大臣へと差し替えることといたしました。しかし、うまく連絡が現場に届いておらず、冒頭は大臣のご出席がありUnder Controlに関するご答弁をいただいた後の御退席となりました。後段の質問で、住宅の断熱性能が劣っていることが原因で循環器疾患による家の中での死亡例がわが国は極端に多い、と言うことに関連した厚生労働省の見解を引き出せなかったのは残念でありました。
2つ目のパネルで取り上げたのは、再生可能エネルギー発電のわが国における現在の比率と2030年の目標の数値についてです。最も基本的な数字ではありますが最も本質的にわが国の遅れを示しています。当時の河野外務大臣のスピーチにも出てきますが、日本の2030年の目標数字が多くの先進国で既に達成されている数字であると言う事実は実に情けないものがあります。さらに質問した通りその目標数値は4年以上前に経済産業省が定めたものであり、過去5年間の劇的な世界の動きを全く反映しておりません。多くのライバルが既に達成している経営目標を2030年の目標として掲げるような経営者は、普通の民間企業の経営者であれば明らかに失格でしょう。そんな経営者の経営する企業は残念ながら滅びるのみです。
その点は3つ目のパネルで発電手法の違いによるコストがこの10年間でどのように変遷したかを示しました。日本は少なくとも5年は世界から遅れるわけでありますが、逆に言えば近い将来に確実に日本でも起きる状況をそのグラフを示しています。原発が安い、石炭火力が安い、再エネでは高いと多くの国民は未だに信じている可能性がありましたので、あえて指摘をいたしました。ちなみに再生可能エネルギー発電の最大の優位性は電気を作るのに燃料コストがかからない点であります。加えて分散的に大量のシステムを設置すると言う事は、原発や火力発電と比べて量産効果が生まれやすいと言うことでもあります。国民負担の議論がよく出ますがこの2点を考えれば長い目で見て確実に再生可能エネルギーが有利である事は世界のみならずこの日本でも自明の理であります。FITの価格設定が高すぎたために国民負担が大きくなったと言う議論がありますが、FIT法に明記されている通り2012年7月にスタートした価格の見直しは半年ごとに行うことが可能であり、当時から今日に至るまでその権限は安倍内閣の経済産業大臣にありました。国民負担を言うのであれば、それは河野大臣の演説にある通り、安倍政権によるFIT制度の硬直的運用が原因です。
3つ目のパネルと関連させて、ここでは千葉県の石炭火力計画3つが白紙となったこと、そして最近カジノの計画も立消えになったことを言及させていただきました。地元千葉県での石炭火力計画がなくなった事は長い目で見て素晴らしい経営判断であり敬意を表するものです。一度大規模発電所を作れば最低でも40年間は運転をするのが普通であり、今から建設して40年間運転すればゆうに2060年代に入ってしまいます。今世紀の後半に石炭火力の電気が売れるとはとても思えませんし、また温暖化の関係では社会が許さなくなると思います。2022年までに原発ゼロを掲げているドイツは、昨年末に石炭火力発電の2038年までの全廃を発表しました。なお、石炭火力については小泉環境大臣の選挙区である横須賀に首都圏唯一残っている新設の石炭火力計画が動いていますが、所管ではない環境大臣からはたいした答弁は出てこないので、あえて質疑はやめました。中身のない空虚なパフォーマンス的発言は意味がないからです。
全体として、当時の河野外務大臣のスピーチ原稿を日本語で読み上げるべきであったと反省しています。閣内不一致とは言いませんが、あの国際社会への発信はいわば内閣の本気度のなさを内部告発するような中身であります。その原稿を読み上げた後、安倍総理に問いただすべきであったと思います。余談でありますが、BSフジのプライムニュースに2012年に一緒に出演をした河野さんとは、エネルギー政策に関する目指す方向性が同じでありますので、テレビでもあまり議論にもなりませんでした。
カジノより再エネと言うメッセージとともに、後半ではカジノより省エネと言うことも取り上げました。これは、日本では有名な省エネの大きな穴であります所の住宅の断熱性能に関わる問題です。中国に輸出ができないアルミサッシで多くの日本人が暮らしていると言う不都合な真実をまず多くの国民に知っていただくこと。そして厚生労働省には聞けませんでしたが、断熱性能の劣った住宅で潜在的に多くの国民が健康を害していること。そして、にもかかわらず国土交通省はエネルギー基本計画にある2020年までの断熱の適合義務化を先送ってしまったこと、全く本気度が足りないことの具体的な証左であります。今後少しでも断熱性能が優れて消費エネルギーが最小化される優良住宅を普及させねばなりません。
議論の途中、経済産業大臣がわが国のコストが下がりにくい理由として、「日本の特殊事情」などと言う適当な発言がありました。すかさず私はやる気のない安倍総理自身がその特殊事情であるということを主張させていただきました。これをもっと強調すればよかったと反省しております。30分間の質疑の終わり方として、ここまで先進国に遅れをとってしまったわが国が、今からでも少しでもその遅れを取り戻すために、取りうる選択肢は2つ。1つは安倍総理が心を入れ替えること。そして2つ目は、それができないなら安倍総理を入れ替えること。このような終わり方で質疑を終了すればよかったなと思っております。今後もさらに精進して参ります。
なお、最後に野党側が対案として既に国会に提出をしている5つの法案(原発ゼロ法案と分散型エネルギー社会4法案)につき、4つ目のパネルで言及することができたのはよかったです。本来はもう一つ、昨年防衛省で始めたいわゆるRE100の取り組みにつき取り上げる予定でした。これは野党が提出している法案の1本の中身でもあり、全省庁あげて国や自治体が民間をリードする形で再エネ省エネに取り組む中身であります。河野大臣に別段の義理はありませんが、全くやる気のない安倍内閣の中では、どうしても河野さんの言動が異彩を放つのはやむを得ないところです。
また、今回は触れる程度でしたが、再エネや省エネと並んで重要なこれからのキーワードは分散型のエネルギーです。千葉県の睦沢町の例も言及しました。自然災害に強いエネルギーシステムは分散型である事は明白であり、しかも分散型のシステムにはイノベーションの果実である人工知能やIoT、ビックデータやブロックチェーンなどの技術が必須であります。これまでのように大規模集中発電で発電し、送電線で大量の電気を遠くに届けるようなシステムでは、台風15号の時の房総半島のように広範囲にわたっての長期間の停電が懸念されます。そのことを痛感した国民とともに、分散型自然エネルギー社会を加速していくためにこれからも全力で頑張って参ります。
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