【かなめ日記】「ミヤンマー・タイ」
掲載日:2012.03.27
去る3月17日深夜から21日の早朝まで、経済産業部門の衆参メンバー4名他で両国を訪問したので概要をご報告いたします。
ミャンマーの視察の目的は、民主化の動きが高まってきた同国との経済連携の可能性を模索するというものでした。同国は私にとって初めての訪問でしたが、第一印象は今からおよそ30年前に訪ねたフィリピンと似たものでした。実際、今のミャンマーの一人当たりGNPはおよそ800ドルと、当時のフィリピンと同水準です。加えて、高い識字率、人口6000万人以上、豊富な天然資源、そして歴史上のつながりで極めて親日的ということで、今後の我が国との経済連携は大変重要です。日本大使との意見交換、ヤンゴン日本商工会議所メンバーとの意見交換、ヤンゴン市長訪問、そして戦略的港湾開発特区のティラワ地区を視察しました。
具体的な重要分野としては交通インフラ整備、港湾開発、都市開発、上下水道、ごみ処理、日本との直行便(かつてあった)、通信インフラ整備(ネットのスピード遅い、ドコモ使えない)、人材育成協力など。80年代から韓国や中国の進出は目覚ましく、我が国は米国による対ミャンマー経済制裁の流れの中で大きく後れをとってしまいました。ちょうど今、民主国家としての初の選挙が行われており(4月1日投開票)、アウン・サン・スーチー女史が民主化の鍵を握っていることは言うまでもありません。今後、官民を挙げて、我が国と同国とのウィンウィンの関係を作り上げていく必要があります。
今後の可能性の大きいミャンマーを後にして、次に、既にこれまでの努力で大変大きな経済圏になったタイ・バンコクを訪ねました。10年ぶりのバンコクはさらに大きく発展し、特にミャンマーから入ると道路インフラの違いを強く実感できます。街全体が非常に洗練された印象でした。
政権を失った野党党首のアシピット党首らを表敬訪問しました。「直面する事象にあまりとらわれすぎない」「すぐには成就せずとも、正しいと信ずることを行い続ける」という助言をいただきました。
要人訪問の他、視察の中心は大洪水の影響後の自動車関連産業の現場でした。ホンダをはじめ、日系自動車メーカーも打撃を受けましたが、被災から一か月後には操業を再開できたところも多く、またタイ人の愛社精神の強さも再確認でき、これからの復興フェーズで業績は急回復、そして日本自動車産業にとって東南アジアの最重要国であり続けることは間違いなさそうです。タイは現在失業率が1%を切っており、特に非熟練工の不足が深刻。最低賃金が4月から4割上がるなど、人件費は東南アジアではかなり高くなっていますが、同時に、バンコクを除く国内の自動車保有率はまだまだ低く、個人所得水準からすると国内マーケットも大きな可能性があり、ミャンマーはじめ近隣諸国への戦略拠点としての価値もますます高まると予想されます。
タイにおける日本車シェアは現在もなお90%以上。日本国外では最強の市場となっています。同時に、我が国自動車産業「最後の牙城」でもあり、特に技術力を高めた韓国車が大きな脅威となりつつあるとのことです。「韓国は官民挙げて、文化から入ってくる」「政府によるODAの強化が、日本のイメージを高め、途上国での日本企業にとって有利な市場環境に繋がっていく」というトヨタ幹部の言葉が印象的でした。また、日産の幹部からは「日本はオールジャパンとしての取り組みが弱い」とも指摘を受けました。
最後にタイと日本での自動車産業の貢献度を比較すると、GDP比率ではタイが11.3%で日本は17%、雇用比率ではタイが8.8%で日本は10%。まさに「アジアのデトロイト」として、アジアの自動車産業はタイを中心にさらに発展していくことが期待されます。
往復とも機内泊という強行日程での視察でしたが、今回も実に密度の濃い、そして得るものの多い視察となりました。まず、なんといっても、東南アジアの市場の魅力、とりわけ自動車産業の有望性を実感し、そして、「日本」「Japan」そのものが最大の付加価値だということを再認識しました。これは他国にはなかなかマネのできないものです。いつもの私の主張、海外を訪ねれば如何に日本がすごい国か、如何に日本人が他国に尊敬されているかが分かり、やる気と勇気が湧いてくるのです。世界を見れば、日本のビジネスチャンスが、そして日本の使命が見えてくるのです。
と同時に、韓国がやはり日本の産業にとって最大のライバルであること、そしてクールコリアの戦略はアジアでも聞きしに勝る成功を収め、韓国の存在感がアジアを席巻しているという事実です。我が国は、今後この韓国の官民挙げてのクールコリアはじめとした戦略からしっかり学び、我が国の新たな成長戦略の中で生かすべきであると感じた次第です。
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