【現地本部長日記】「事故からの連想」
掲載日:2011.07.25
国威を賭けた中国の高速鉄道が大事故を起こしました。亡くなった方々のご遺族へのお悔やみと、負傷された方々へのお見舞いを申し上げます。日本の複数の有識者がコメントしているように、本当に「日本なら考えられない」類の事故なのか、あるいは、何故早々と事故車両を土中に埋めてしまったのか、あるいはまた、運転再開の前の安全確認は万全だったのか、など、色々な疑問も沸くのですが、今の私の立場からすると、もう一つ「もしこれが原発事故だったら?」という連想が脳裏をよぎります。
昨年、日本政府が打ち出した成長戦略の柱には「海外インフラ輸出」が挙げられ、高速鉄道も原発もその代表分野とされました。新興国の側からすれば、先進国からの様々な技術を輸入し国策として全力挙げて推進するという意味において、高速鉄道も原子力発電所も同じです。東京電力福島第一の原発事故が教訓となって、中国やインド、ベトナムなどの新興国での原発にも一層の安全性が求められることは当然のことですが、それでも、世界規模で見れば今後まだまだ原発の新設は続くと考えられますし、今回の事故を上回る原発事故が将来にわたって起こらないという保証は全くありません。
であれば、せめて今わが国が経験しているこの不幸な事故とその収束に向けた日々の苦闘を、貴重なわが国の知見として、(想像もしたくはないけれども)万が一将来再び地球上のどこかで原発事故が起きてしまったときに、人類への、そしてわが国への被害を最小限に食い止めるために活用するということを、今から頭の隅には置いておく必要があると思います。特に、日本にとっては近隣諸国の原発事故は文字通り人ごとではありません。原発の立地や風向き次第では、近隣諸国での原発事故が甚大な被害をわが国にもたらすシナリオも当然十分に考えられるのです。
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