【現地本部長日記】「やらせ」

掲載日:2011.07.29

かつて自民党政権の小泉内閣時代に、教育基本法改正に関するタウンミーティングで、「やらせ」が国会で大きな問題になったことがありました。私もその問題を委員会で取り上げました。それ以外にも裁判員制度のタウンミーティング、再チャレンジタウンミーティングでも同様に「やらせ」が発覚しました。そういう不正行為を平気で行う権力が信じられませんでした。

そして、デジャヴの如く、また同じ問題が発覚しました。つい先日まで、九州電力が会社ぐるみで云々、そういう問題も吹っ飛びます。次元の違う問題です。もしこれが事実ならば、動かぬ証拠とでも申しましょうか、「安全性をチェックする組織が実は原発推進の旗も振っている」という、長年指摘されてきた問題が具体的に白日の下に晒されたことになります。経済産業省の政務官という立場からもお詫びを申し上げなければなりません。

問題のシンポジウムは2007年に開かれています。政権交代以前の出来事なわけですが、やはり詰まるところ、単に保安院の問題というのではなく、当時の政治権力の「原発をとにかく増やすべし」という政治意志が高じて、いわば掟破りを平気でしていたということなのでしょう。と同時に、政権交代前だから現政権は反省点が全く無いとも言い切れず、せっかく野党時代から保安院の自己矛盾を見抜き、民主党の政策集の中にも「国家行政組織法第3条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設(民主党政策集INDEX2009(PDFが開きます)、39ページ)」を確かに謳っていたにも関わらず、それを具体的に着手できなかったことは、自分も含めて忸怩たるものがあります。

今こそ、膿を出し切るチャンスです。渦中の保安院(経産省)は総勢450名で、そのうち東京には約340名います。また、今回同じように有名になった原子力安全委員会(内閣府)は、事務局に約100名いて、専門部会の委員は約250名います。同じ建物には、似た名前の原子力委員会(内閣府)の事務局が約20名と専門部会の委員が約40名。加えて、独立行政法人としては放射線医学総合研究所(文科省)、日本原子力研究開発機構(文科省、経産省)、原子力安全基盤機構(経産省)、また社団法人の日本原子力産業協会、財団法人の原子力安全技術センターなどなど。確かに人的資源は豊富のようです。しかし、せっかく能力の高い職員が大勢いながら、政治がそれら組織の方向付けを必ずしも正しく行わなかった結果、全体として力を発揮しきれず、今回の大変な事態を未然に防止することはできませんでした。これら既存の組織・団体を、ミッション・機能などで根本から見直さなければなりません。同時に、個人的には、これらの機能を可能な限り福島県へ移転させることも検討すべき(もし福島県や市町村に歓迎されるのならば)と考えています。

余談ですが、以前日記でも書いたSPEEDIの問題の根っこにも、この複雑な組織群と組織の壁の問題があったと私は思っています。

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