【かなめ日記】「あらためて、TPP」
掲載日:2011.11.26
激論が繰り返されたTPPも、ようやく少し収まってきた感がありますが、この間の騒ぎは一体何だったのでしょうか。その根っこには、ちょうど放射線に対するものと同じ、即ち、その実態がよく分からないことに起因する恐怖感、があったのだというのが、私なりの解釈です。私は、二週間ほど前に開かれた民主党内での最後の総会の場で手を挙げ、「虎穴に入らずんば虎子を得ず、という言葉通り、まず交渉のテーブルに着くことだ。ただし、そこにいると思っていた虎子が、実は一匹もいない(つまり、国益に反する)可能性もある。もし、それがはっきりしたなら、胸を張って交渉の席を蹴って出てくることだ。」という趣旨の発言をしました。要するに、これからが正念場だという意味です。 ある意味、無理からぬことだと思いますが、3.11の大震災を経て、今の日本には一層内向きの志向、心配症が強まっているのだと思います。これから交渉に臨むというのに、常に日本が「やられる」という受身の発想、被害者の発想に凝り固まってしまっている発言が多いことに驚かされました。国民皆保険制度が破壊される、というのがその典型です。はっきり言って余りにも非現実的、扇動的なコメントであり、そのようなことは起きるはずもなければ、絶対にあってはならないことです。むしろ、世界に冠たるわが国の国民皆保険については、日本が米国にその採用を迫るような主張を交渉の場で繰り広げるべきものです。 しかし、農業については別の話です。日本の農業が他の諸国とは異なり、65歳以上の高齢者によって支えられ後継者不足に悩んでいること、TPP参加に賛成をし、既に成功している先進的な農家もたくさんいること、旧政権時代の農業政策が実は農業土木政策であって、農協には都合が良くても農家のためにはなってこなかったこと、日本の農作物の輸出は、他の先進国と比較すればこれまで極めて小さい割合しか行なわれておらず、それは即ち無限のアップサイドの可能性を秘めていることを意味するということ、これらは周知の事実であります。また、日本人の中で、日本の農業が無くなっても構わないと思っている人は皆無でしょうし、今よりも食糧自給率が下がっても良いと考える人も少ないと思います。農業の輸出力を徹底的に強化して、中国の沿岸部だけでも8億人いるとも言われている年収1000万円以上のいわば「舌の肥えた」消費者から圧倒的に支持されるような、競争力ある農業を誕生させること。これこそがまさにこれからの日本の大いなる挑戦ではないかと思います。 もちろん、そのためにも次の世代がどんどん農業を生業として選ぶようにならねばなりません。それには、食っていける仕事、であると同時に、使命感の持てる仕事、という認識が大切だと思います。先日、地元のある農家の方が面白いことを仰っていました。「農業」というネーミングを変えて、「国土保全業」と呼んだらいいのではないか、というのです。その心は、まさに全ての国民のいのちと暮らしの基盤である国土を美しく保ち、大切に守り抜くという、崇高な使命を帯びた仕事が、「農業」なのだということです。今以上の食糧自給率を目指し、TPPに入る、入らないに拘わらず、日本の農業を国がしっかりと支えていかねばならないことは、議論の余地が無い当然のことなのです。関連記事
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